秘密基地でする秘密のこと

a0158124_11434152.jpg『hi mi tsu ki chi』という可愛らしい写真集を見た。カメラマンは西宮大策さん。
2006年6月から2008年12月にかけて、彼は東京近郊の秘密基地を探して回ったらしい。でも秘密基地は秘密だからもちろん見つからなくて、子供たちに聞いてなんとか見つけた20個の基地のうち、写真集には13個を収録してある。
懐かしいよね、秘密基地…。

で、どんなのがあるかというと、まず制作者は下は3歳くらいから上は小学6年まで、ざっと見ていちばん多いのは4年生かな。4年生ぐらいは体力もあるし、だいぶ知恵もついてきて想像力もあって、いちばん子供らしい子供の時期。学校の図工の授業なんかもそうだったけど、ちょうど思うようにものを作れるようになる心と身体のとてもバランスのいい年頃だからかな。

兄弟や友達同士の複数の仲間で作ってて、基地の場所と制作者の年齢と作った感想なんかもひとこと載ってる。この生の言葉が結構、いいんだよね。
場所はちょっとした空間、ビルや家と塀の隙間、植え込みや林のなかの何となくほんわり空いたところ、そういう人目につかないところ、または、最初から何かそこに粗大ゴミみたいなものがひとつ放られてあって、そこから基地へと発想したものもあった。
(写真集では渋谷の繁華街の裏手の空き地に洋式便器がぽつんと捨てられてあって、そこを基地にしていた)

「基地作ろうぜ」と決まったら、みんなで手分けして、そこらで拾ってきた椅子(これは本格的になるからいちばんありがたい)やら傘やらダンボールやらバケツやらで、家らしく空間を整える。最近は粗大ゴミの日が決められているからか、写真集では物資不足で、ダンボールやシート、傘あたりがいちばん多かったな。でもそこは想像力で補えばよくて、すずらんテープでぐるりでも、そこはもう外とは違う特別な場所、どんなにお粗末でも自分たちだけの秘密基地になる。

塀と家の隙間やちょうどいい高さの植木を寄せて、その上に幾枚かのダンボールかシートをばさっと乗せて屋根にする。何にもなければ傘を斜めに立てかけるだけでもいい。テーブルはダンボールの箱かバケツのひっくり返したの。ほつれた座布団やタオルなどの布製品があれば、敷いたり掛けたりすればずっと豪華になる。
そういう簡素な、でもちゃんと子供たちの遊んだ楽しい気配と特別感の漂う秘密基地が、場所の遠景とその場所のどこらへんに基地が作られていたのか、バツ印をつけた地図と一緒に写真集には紹介されている。
さっきも書いたけど、制作者の感想が良くてね、クスっと笑えるものがある。

小学5年と2年の兄弟の場合。

兄「かんっぜんにかくれてる」
弟「あ!ここのヒモひっぱり直す?」
兄「基地、完成してんだ、さわるなよ」

それから、小学2年生のひとりごと。

「下くぐればグランドにも出れる。ボールしまっとくにもいいよ」
「たまにここでおしっこもする……お母さんには言わないでね」

それから、小学3年生、9歳のも。

「このまえ、こっちにも誰かの基地があったけど……ない!なくなってる。こわされた。となりにさ、本があったんだ、エロいやつ」

秘密基地って、大人には秘密だからね、それから他のさほど親しくないクラスメートにも秘密。この秘密っていう感覚は「いけないこと」にも直結していて、いいんだよね。
だから、この「おしっこしちゃう」っていうのが、もの凄くいい感性してるんだよ、この子。捨てられてた大人のエロ本見るのなんかより、もの凄く迫ってる感じがする。
子供時代のやれるだけ精一杯のエロスでしょ、おしっこしちゃうって。
トイレじゃないところで、というのもあるんだけど、それ以上に秘密の場所で性器を出す、空気にさらすのがさ、もの凄い「いけないこと」で「ぞくぞくして興奮して陶酔しちゃう」ことなんだよね。こういう感性、っていうか本能っていうか、お医者さんごっこもそうだけど、言わないだけで結構こういう子供時代過ごしてるはずだから頷けると思うけど、決しておかしな狂った世界じゃなくて、大事だったと思うんだよね、ふり返ってみると。情操教育ってほどじゃないけど、広く芸術的な感性を育む上で。

私自身、秘密基地を仲間と作ったのは、やっぱり小学3年か4年生の頃だったな。
あの頃はまだ空き地がそこらにあったんだよね。1975年頃の神奈川県大和市。
男勝りだったからよく男子たちとドッジボールとか缶蹴りとか探検ごっことかやってたと思う。空き地の隅の植え込みのなかに、ちょうどいい空間があって、そこを基地にしてたと思う。

ぼろのマットレスとか敷いたりしてた気がするなあ。もちろんダンボールとかピクニックシートとかも家から持ってきて、結構居心地良く作ってた。みんなでお菓子持ち寄って食べて、ここをクラスの誰それに教えるか教えないかで揉めたりなんかして。
一緒に何気に遊んでいるけど、ほのかに好きな男子で、秘密基地に仲間と一緒にいることに、ちょっとドキドキっていうか特別な感情があったと思う。
そこでたしか数人で、捨て犬の仔犬をダンボールで飼ってた。牛乳とかコッペパンとか学校帰りに持っていってた、かわりばんこで、ドラマみたく。
でも、ある日、死んでた。固くなって、ダンボールのなかで。体に小さな蟻がいくつも這ってたのを憶えてる。

あとは、秘密基地じゃないんだけど、やっぱり小学4年か5年の頃じゃないかな。
今どうしてそんなことができたかわからないんだけど、空き家に女の子だけで入ってね、
(その子ん家の持ち物だったとしか思えないけど)お菓子食べて、好きな子の話したり、学校のうわさ話して。で、なんでそうなったかわからないけど、女の子どうしでこっそりキスのまねごとしたりしてた。早熟だったからな。

そのときの「いけないこと」の陶酔の記憶の隅に、西日で赤く染まったガラス窓が残ってる。だから、私にとって「西日で赤く染まったガラス窓」っていうのは、もうなんていうか、エロスの発端っていうか、その後、大学時代に彼氏の部屋でそういうことになって、ふと見上げたガラス窓が西日で真っ赤に染まっていたとき、「ああ、ここへ繋がっていたんだな」なんて、変に納得したものだった。自分が演出家だったら、久世さんみたいに、幸薄い女には赤い傘持たせるように、西日で赤く染まったガラス窓でエロス出すね。

秘密基地でささやかな秘密を分け合って、陶酔していたあの頃。
でもいつしか、みんな秘密は自分のなかだけでひっそり培養することを覚えて、ちりちりばらばらになっていったんだ、大人にむかって。

そんな懐かしい「hi mi tsu ki chi」の写真集。おすすめです。



※これはずいぶん昔に書いた文章ですが、最近では作家の川上弘美さん、クロマニヨンズの甲本ヒロトさんもおすすめのようです。どうぞ。
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by zuzumiya | 2010-09-11 11:49 | わたしのお気に入り | Trackback | Comments(0)
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