暮らしのまなざし

啄木の変換術

落ち込む時はたいてい、人と比べて自分の至らなさを情けなく思い、自己嫌悪になっています。人にあって自分にはないものばかりに気が行き、自分の価値がどんどん小さいものに思えてきます。そんな時、本当の幸せは自己肯定にこそあるのだなあと、しみじみ思います。啄木の歌に「友がみなわれよりえらく見ゆる日よ 花を買ひ来て 妻としたしむ」があります。啄木も己の情けない現状に胸が塞がれたのでしょうが、彼の素晴らしさは、内心では誰かにすがりつきたいような荒ぶりを抱えていても逃げずに、ささやかな花束を買って、この惨めな夜を妻の笑顔と引き換えたところにあります。情けない自分にそれでも慕ってついてくる妻への申し訳なさと憐れみの入り交じった感謝の気持ちが、小さな灯りとなって読者の心を照らします。落ち込んで悲しい時は、誰かにすがって悲しみの荷を負わせるのでなく、啄木のように誰かにやさしくあればいいのだと教えてくれるのです。

※「たいていの不安や喜びが皮膚の内側の自分ではなく、外側の世界に映っている幻影の自分から生じてくるのだということは、自然の前にポツンと立ってみると思い知らされる。われわれはいかに、あやふやな他人の頭の中に生甲斐を感じているか?」
 辻まことさんの「余白の告白」から。
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by zuzumiya | 2010-04-20 12:55 | 日々のことづけ | Trackback | Comments(0)
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